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沢地 龍澤寺
こんにちは。スタッフR.Sです。
以前、参拝に訪れた時は「修行期間中につき部外者立入り禁止」となっており、ご紹介できずにいた
「龍澤寺」。
先日ようやく参拝に伺えたので、ご紹介いたします。
龍澤寺は沢地にある臨済宗妙心寺派の禅寺。
宝暦10年(1760年)、白隠慧鶴禅師が小さな荒れ寺だったところを買い取って開創されたそうです。
白隠禅師は、当時衰退していた臨済宗の中興の祖と称される江戸中期の禅僧であり、「駿河には、過ぎたるものが二つあり、富士のお山に原の白隠」と俗謡が謳われている、五百年間に一人と言われるほどの高僧。
地元の原(沼津)の松蔭寺に出家してからは、禅と修行により悟りを開き、悟りを開いた後も修行を続け、それまでの公案(禅問答)を独自に洗練させました。
また、独学で禅の教えを表した絵(釈迦、観音、達磨)を数多く描いたことでも知られています。
白隠禅師の没後、再び荒廃してしまう龍澤寺でしたが、
その白隠禅師の再来と言われている山本玄峰老師によって再興することとなります。
和歌山県湯の峰温泉で生まれた山本玄峰老師は、生後すぐに旅館の前に捨てられてしまったそうです。
それを通りかかった岡本善蔵に拾われ、岡本家の養子となることに。
岡本芳吉と名付けられました。
小さい頃は暴れん坊で、感が鋭かったことから「感応丸」というあだ名がついていたそうです。
10代前半から肉体労働に従事し、17歳で結婚し家督を継ぐものの、19歳の時に病気が原因で失明寸前に陥ったことから、弟に家督を譲り、目が見えるようになるようにと願をかけ、四国八十八箇所の霊場巡りに旅立ちました。
「盲目」と「裸足」での厳しい遍路の途上、高知県の雪蹊寺で山本太玄和尚と出会います。
「心の眼は一度開けばつぶれることはない。死んだつもりになれば、本当の坊さんになれる」という和尚の言葉に諭され、芳吉は仏門に入ることに。
出家の後は、その熱心な修行ぶりを見込まれ、山本玄太和尚の養子となり、山本玄峰として太玄のあとを継ぎ雪渓寺の住職となりました。
雪渓寺に入り20年、43歳で雪渓寺を太岳和尚に譲り、全国の名だたる禅僧の下でふたたび修行に励む日々を送るようになった玄峰老師。
龍澤寺、松蔭寺、瑞雲寺など白隠慧鶴の古刹を再興し、50歳で、ここ三島、龍澤寺の住職となりました。
そして時は太平洋戦争末期。
絶望的な状況下に置かれた日本の首脳陣は、戦争の行方に頭を悩ませていました。
このまま突き進めば間違いなく日本は滅ぶ。
しかし、当時の状況下で戦争を止めるべきである、とか、降伏すべきだ、と公言するものは誰もいませんでした。
こうした状況の中、戦況悪化の責任をとる形で総理大臣を辞職する小磯國昭の後任に、時の海軍大将・鈴木貫太郎が天皇陛下直々に懇願され、推薦を受けます。
「武人、政治に関与すべからず」を信条としてきた鈴木は引き受けるべきか否か、頭を悩ませていた時に、山本玄峰老師に助言を求めます。
そこで玄峰老師は「戦争を止めるために引き受けなさい」と鈴木を終戦に向かわせるための助言を与えることになりました。
これを機に日本は、無条件降伏を主旨としたポツダム宣言を受諾し、終戦を迎えます。
この時の天皇の肉声による終戦の詔勅「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び…」は玄峰老師の授けた言葉であり、戦後の幣原喜重郎首相に「象徴天皇制」の案を授けたのも老師だったといわれています。
玄峰老師の英断により、日本は救われたのです!
(といっても過言ではないですよね?)
随分と話の筋が脱線してしまった様な気もしますが(汗)、龍澤寺の歴史を遡ると、現在の日本の根底を覆すような歴史があることがわかりました。
歴史を動かしてきた僧侶たちがたどり着いた場所、龍澤寺。
龍澤寺がこのような場所に成りえたのも、三島の、沢地の持つ静かで緑豊かな里山の土地の力があるのだと思います。
私たちが訪れた際も、鳥のさえずりと木々が風に揺れる音以外は何もない、修行に耽るにはこれ以上とない環境であるように思えました。
程よく広い、手入れされた境内を散策すると、生き生きとした彫刻が美しく、均整のとれた伽藍や鐘突き堂に目を奪われます。
龍澤寺の名にふさわしく、龍の彫刻は今にも動き出しそうな生命力さえ感じます。
門の天井を見上げれば、力強く羽を広げた鳳凰の彫刻。
忙しそうに駆け回るお坊さんの姿も見られ、人気の無い里山のせいもあってか、普段生活している世界とは違う場所に来たような感覚を覚えました。
少し先の話ではありますが、毎年11月23日は1年に1度の一般公開の日で、掛軸などの貯蔵品の虫干をする、観楓祭が行われます。
紅葉が美しいことでも知られる龍澤寺。
過ぎ去った歴史に思いを馳せつつ、紅葉狩りに訪れてみてはいかがですか?
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龍澤寺
所在地 三島市沢地326番地
電話 TEL:055-986-2206
参考url http://www.mishima-kankou.com/msg/midokoro/10000019.html
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